所得が低い国の女性との結婚

ここボルネオには日本企業による建設工事現場がいくつかある。

そこには多数の日本人が働いているのだが、国内と同様、特に50代後半から60代の人が多い。

彼らは1970年代からたたき上げで工事一筋で各国を渡り歩いてきた海外建設のスペシャリスト揃いで、いま国内で働いているひとからすると、それはもうとてもよい給料をもらってきた。数年現場で働くと、余裕で日本に家一軒買えるほどの金額が貯まるなどと言われてきたし、実際そうだった。

ただ、彼らは家が買えるほどの貯金があっても、ずっと海外を渡り歩いているわけで、日本に家を買っても住む時間がない。もっというと、独身だと住んでくれる家族もいないので、貯金ばかりが貯まっていく。

 

そんな彼らだが、行く先々の国の人からすると大金持ちで、当然現地の女性にはもてる(もてた)わけで、それが縁で結婚に至ることもしばしばである。日本人の女性よりも純朴(そうに見える)な現地女性との経済的に豊かな生活は、それはもう楽しい日々だったろう。ところが、その国での工事が終わり、別の国の現場に行くことになったときに転機が訪れる。次の国で奥さんのビザが下りることは滅多にないので、そのままその国においていくことになる。(もしくは日本に単身で住まわせる)

 

遠距離恋愛とはなかなか続かないもので、そうなるといずれにしても夫は単に仕送りするだけの存在となる。そのうち、奥さんからは実の親の為に家を買いたい(もちろん家の名義は奥さん)、弟妹の学費を出したい、などという要求がエスカレートして、コツコツためた財産もいつのまにか底をつく。

さらに良くないことに、工事現場というのは衣食住完備で、日々の生活にはまったく不自由しないのでその問題の深刻さに気づかぬまま、自分は歳をとり、老後のための蓄えも作ることができずに、現場を渡り歩く生活を続けざるをえなくなる。

 

少し前に人生いろいろ、年金もいろいろ、なんていう言葉が流行ったが、まさにそんな言葉を思い出させるような、でもその仕事ぶりはとても尊敬されている日本人が、間近にはたくさんいる。

 

ではまた。